発達障害と療育について知っておきたいこと

発達障害と診断されたお子さんを持つ親御さんは、子どもの発達や将来について不安や悩みを抱えていることでしょう。

 

子どもの困りごとを解決するために、療育という支援を受けることができますが、療育とは何なのでしょうか?どんな効果が期待できるのでしょうか?

 

どうやって受けられるのでしょうか?

この記事では、発達障害と療育について、以下の3つのポイントに分けて解説します。

- 療育とは何か
- 療育の種類と方法
- 療育を受けるための手順と注意点

 

 発達障害とは?

発達障害とは、脳の発達に何らかの問題があることで、言語やコミュニケーション、学習や行動などに困難が生じる障害の総称です。発達障害には、自閉症スペクトラムASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、発達性協調運動障害(DCD)、などがあります。

発達障害は一人ひとり特性や程度が異なりますが、一般的には以下のような特徴があります。

- 生まれつきであり、治るものではない
- 男女比は男性に多く見られる
- 早期から症状が現れるが、診断されるのは小学校入学後になることが多い
- 知能や外見には必ずしも関係しない
- 他の精神障害や身体障害と合併することがある

 

発達障害は、子どもの成長や社会生活に影響を与える可能性があります。

例えば、言葉を理解したり話したりすることが苦手だったり、友だちと上手く関われなかったり、勉強や仕事に集中できなかったりすることがあります。

また、自分の感情や欲求をコントロールできずにイライラしたり暴力的になったりすることもあります。これらの困りごとは、子どもだけでなく家族や周囲の人々にもストレスを与えることがあります。

 

しかし、発達障害は決して悪いことばかりではありません。発達障害のある子どもは、他の子どもとは異なる視点や感性を持っていたり、特定の分野に深い興味や才能を持っていたりすることがあります。

例えば、細かいことに気づいたり記憶力が高かったりする子どもや、音楽や絵画など芸術的な才能を発揮する子どももいます。発達障害は個性の一つであり、その子らしさを尊重し受け入れることが大切です。

 

療育とは何か

療育とは、発達障害などで支援を必要とする子ども達に、「医療」と「教育」の両面から、社会的な自立のための訓練を行うことです。

療育は、元々は身体障害のある子どもへの「治療」と「教育」を掛け合わせたアプローチを表す用語として使われていましたが、

現在は、身体障害に限らず発達障害や知的障害など、障害のある子どもや発達が気になる子ども全般が対象となっています。

療育の対象は、基本的に18歳以下の子どもです。障害種別については、身体障害、知的障害、精神障害発達障害を含む)のいずれかに該当する障害がある子どもが療育の対象となります。

 

療育の目的は、子どもが社会的に自立できること、また、今感じている困りごとを軽減することです。

そのため、療育では、主に「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の5つの領域において、さまざまなアプローチを行います。

 

「健康・生活」

例えば、「健康・生活」の領域では、「お風呂や歯磨きなどを極端に嫌がる」「毎日のことなのに支度や片付けができない、忘れ物が多い」などの困りごとが表れる場合があります。

これらは、発達障害の特性によって強いこだわりやマイルールがあったり、感覚過敏(触覚過敏)があったりすることで、お風呂や歯磨き、トイレなどの生活習慣にも高いハードルを感じるケースがあります⁵。そこで、療育では、生活リズムやルーティンを作ったり、視覚的なスケジュール表やタイマーを使ったりして、生活習慣を身につける支援を行います。

 

「運動・感覚」

「運動・感覚」の領域では、「バランス感覚が弱くて転びやすい」「手先が不器用でボタンやファスナーができない」「音や光に敏感でパニックになる」などの困りごとが表れる場合があります。

これらは、発達障害の特性によって、運動機能や感覚統合機能に遅れや乱れがあることで、身体の使い方や感覚の処理に問題が生じるケースがあります。

そこで、療育では、運動能力や感覚統合能力を高めるための訓練や遊びを行ったり、感覚刺激を調整したりして、身体のコントロールをサポートします。

 

「認知・行動」

「認知・行動」の領域では、「集中力や記憶力が低くて勉強についていけない」「かんしゃくや暴力などの問題行動が多い」「自分の気持ちや考えを伝えられない」などの困りごとが表れる場合があります。

これらは、発達障害の特性によって、認知機能や行動制御機能に障害があることで、学習や自己管理に困難が生じるケースがあります。そこで、療育では、認知能力や学習能力を向上させるためのプログラムや教材を用いたり、行動分析やポジティブリインフォースメント(強化)を使ったりして、認知・行動の改善を目指します。

 

「言語・コミュニケーション」

「言語・コミュニケーション」の領域では、「言葉の発達が遅れている」「言葉は話せるけど会話が成立しない」「相手の気持ちやニュアンスがわからない」などの困りごとが表れる場合があります。

これらは、発達障害の特性によって、言語機能やコミュニケーション機能に障害があることで、言葉の理解や発話、会話のスキルに問題が生じるケースがあります。

そこで、療育では、発音や単語、文法などの言語能力を高めるための訓練や教材を用いたり、コミュニケーションカードやPECS(Picture Exchange Communication System)などの代替コミュニケーション手段を使ったりして、言語・コミュニケーションのサポートを行います。

 

「人間関係・社会性」

「人間関係・社会性」の領域では、「友だちと仲良くできない」「集団行動についていけない」「ルールやマナーが守れない」などの困りごとが表れる場合があります。これらは、発達障害の特性によって、社会性機能や人間関係機能に障害があることで、他者との関わり方や社会生活への適応に問題が生じるケースがあります。

そこで、療育では、友だちとの遊びや集団活動を通して、人間関係や社会性のスキルを身につけるための支援を行ったり、ルールやマナーを理解しやすくするための視覚的なツールやストーリーを使ったりして、人間関係・社会性のサポートを行います。

 

以上のように、療育は、子どもの発達に合わせて、個別にカスタマイズされた支援を行うことで、子どもの能力や可能性を引き出し、社会的な自立に向けて助けることができるサービスです。

 

 

療育の種類と方法

療育には、大きく分けて「個別療育」と「集団療育」の2種類があります。それぞれについて見ていきましょう。

 

 個別療育

個別療育とは、子ども一人ひとりに合わせて、専門的な知識や技術を持った療育者が一対一で支援を行うことです。

個別療育では、子どもの発達段階や特性、困りごとなどを詳しく把握し、個人に最適化されたプログラムや教材を用いて、効果的な訓練や指導を行います。

個別療育は、子どもの弱点や課題に集中して取り組むことができるため、能力向上や問題解決に効果的です。また、子どもと療育者の信頼関係が深まることで、子どもの自信やモチベーションも高まります。

 

集団療育

集団療育とは、複数の子どもが一緒になって、療育者が支援を行うことです。集団療育では、子ども同士の交流や協力を通して、人間関係や社会性のスキルを身につけることができます。また、他の子どもの様子や反応を見ることで、自分の感情や考えを表現したり、相手の気持ちやニュアンスを理解したりすることができます。集団療育は、子どもの強みや興味を生かして、楽しく遊びながら学ぶことができるため、自己肯定感やコミュニケーション能力に効果的です。

 

療育を受けるための手順

発達障害と診断されたお子さんに療育を受けさせるためには、以下のような手順を踏む必要があります。

 

- まず、かかりつけの小児科医や発達障害専門医に相談しましょう。医師から子どもの障害特性や発達状況について説明を受けたり、必要な検査や治療を受けたりします。


- 次に、市町村の福祉事務所に相談しましょう。福祉事務所では、児童発達支援等の受給者証(障害者手帳)の申請や支援プラン作成などの手続きを行います。受給者証は、福祉施設での療育訓練を受けるために必要です。


- 最後に、希望する療育センターや発達支援塾などに申し込みましょう。療育センターや発達支援塾では、子どもの個別の支援計画に基づいて、個別療育や集団療育などのプログラムを提供します。療育センターや発達支援塾の選び方や利用方法については、医師や福祉事務所の担当者に相談すると良いでしょう。

 

まとめ

- 発達障害とは、脳の発達に問題があることで、言語やコミュニケーション、学習や行動などに困難が生じる障害の総称である。


- 療育とは、発達障害などで支援を必要とする子ども達に、「医療」と「教育」の両面から、社会的な自立のための訓練を行うことである。


- 療育には、「個別療育」と「集団療育」の2種類があり、それぞれにメリットとデメリットがある。


- 療育を受けるためには、医師や福祉事務所に相談し、受給者証や支援プランを作成し、療育センターや発達支援塾などに申し込む必要がある。

 

発達障害と診断されたお子さんを持つ親御さんは、不安や悩みが多いかもしれませんが、一人で抱え込まずに、専門家や支援者に相談しましょう。療育は、子どもの可能性を広げるための大切な支援です。子どもの個性やニーズに合わせて、最適な療育を受けられるように、応援しています。