自閉症スペクトラム障害（ASD）とは、他者とのコミュニケーションや対人関係に困難があることが特徴の発達障害です。
自閉症スペクトラム障害には、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などが含まれます。
自閉症スペクトラム障害の原因はまだ明らかになっていませんが、先天的な脳の機能障害が関係していると考えられています。
自閉症スペクトラム障害を持つ子どもは、言葉や表情、ジェスチャーなどから相手の心情や意図を汲み取ることが難しいため、会話や交流がうまくできません。
また、自分の感情や気持ちを表現することも苦手です。さらに、興味や関心が限定的でこだわりが強く、感覚や動きに偏りやぎこちなさがあります。
自閉症スペクトラム障害を持つ子どもの親としては、子どもの特性を理解し、子どもの発達段階や個性に合わせた支援や教育を受けさせることが大切です。
また、子どもの社会参加や自立を促すことや、親自身のメンタルヘルスやサポートネットワークを大切にすることも重要です。
この記事では、自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害とはどんなものか、親として知っておきたい３つのポイントについて解説します。
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害とはどんなものか
自閉症スペクトラム障害とは
自閉症スペクトラム障害（ASD）とは、他者とのコミュニケーションや対人関係に困難があることが特徴の発達障害です。自閉症スペクトラム障害には、以下のような種類があります。
- 自閉症：知的発達や言語発達に遅れがあり、コミュニケーションや対人関係に重度の障害がある。
- アスペルガー症候群：知的発達や言語発達に遅れはないが、コミュニケーションや対人関係に軽度から中度の障害がある。
- 広汎性発達障害：自閉症やアスペルガー症候群には当てはまらないが、コミュニケーションや対人関係に一部障害がある。
自閉症スペクトラム障害の原因はまだ明らかになっていませんが、先天的な脳の機能障害が関係していると考えられています。
遺伝的な要因や妊娠中の感染症や栄養不足などの環境的な要因も影響する可能性があります。
自閉症スペクトラム障害の有病率は、日本では約1%と言われています。
男女比は約4:1で、男性に多くみられます。
自閉症スペクトラム障害は、生涯にわたって持続する障害ですが、適切な支援や治療を受けることで、症状を軽減したり、社会生活を送ることができます。
コミュニケーションの障害の特徴と種類
自閉症スペクトラム障害を持つ子どもは、言葉や表情、ジェスチャーなどから相手の心情や意図を汲み取ることが難しいため、会話や交流がうまくできません。また、自分の感情や気持ちを表現することも苦手です。これらのコミュニケーションの障害には、以下のような特徴や種類があります。
- 言語的コミュニケーションの障害：言葉を使って相手と意思疎通することが困難な障害です。言語発達に遅れがあったり、言葉の理解や発話が不十分だったりします。また、言葉を使っても、相手の立場に立って考えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることができません。そのため、会話が一方的だったり、無反応だったり、冗談や皮肉を理解できなかったりします。
- 非言語的コミュニケーションの障害：言葉以外の方法で相手と意思疎通することが困難な障害です。表情や目配せ、身振り手振りなどから相手の心情や意図を汲み取ることができません。また、自分も表情や目配せ、身振り手振りなどで感情や気持ちを表現することができません。そのため、無表情だったり、視線が合わなかったり、動作がぎこちなかったりします。
- 社会的コミュニケーションの障害：社会的な場面で相手と適切にコミュニケーションすることが困難な障害です。他者への関心や共感が低く、相手の気持ちを理解したり尊重したりすることができません。また、空気を読んだり場に合わせたりすることもできません。そのため、自己中心的な発言や行動をしてしまったり、場にそぐわない発言や行動をしてしまったりします。
コミュニケーションの障害は、自閉症スペクトラム障害の子どもにとって大きな悩みや苦しみの原因となります。また、親や周囲の人にも理解や対応が難しい問題となります。
コミュニケーションの障害の原因と診断
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害の原因は、脳の機能に何らかの異常があることが関係していると考えられています。
具体的には、以下のような要因が挙げられます。
- 脳内の神経伝達物質のバランスが崩れていること
- 脳内の神経回路や神経細胞の発達や成熟が不十分であること
- 脳内の情報処理能力や注意力が低下していること
- 脳内の感情や社会性に関係する部位が正常に働いていないこと
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害は、生まれつき持っているものですが、症状は子どもの成長や発達によって変化します。また、個人差も大きく、軽度から重度までさまざまな程度があります。
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害は、専門医による診断を受けることで確認できます。診断は、以下のような方法で行われます。
- 問診：親や保育園・学校などから子どもの発達歴や症状について聞き取ります。
- 検査：子どもに対して様々な課題やテストを行って、言語能力や知能、行動、感情な
どを評価します。
- 観察：子どもの表情や目配せ、身振り手振りなどを観察して、非言語的コミュニケー
ション能力を評価します。
- 診断基準：アメリカ精神医学会（APA）が定めたDSM-5（精神障害の診断・統計マニ
ュアル第5版）や世界保健機関（WHO）が定めたICD-11（国際疾病分類第
11版）などの診断基準に照らし合わせて、自閉症スペクトラム障害の有無
や程度を判断します。
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害は、早期に発見し、適切な支援や治療を受けることで、症状を改善したり、社会生活を送ることができます。そのため、子どもにコミュニケーションの障害の兆候がみられた場合は、早めに専門医に相談することが大切です。
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもへの対応方法
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもへの対応方法は、子どもの発達段階や個性に合わせて行う必要があります。
また、親や周囲の人が子どもの特性を理解し、受け入れることも重要です。ここでは、自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもへの対応方法について、以下のようなポイントを紹介します。
子どもの個性やニーズに合わせたコミュニケーションを心がける
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもは、言葉や表情、ジェスチャーなどから相手の心情や意図を汲み取ることが難しいため、会話や交流がうまくできません。
また、自分の感情や気持ちを表現することも苦手です。
そのため、親や周囲の人は、以下のようなことに注意してコミュニケーションをとる必要があります。
- 言葉は明確で具体的に伝える：曖昧な表現や比喩や皮肉などは避けて、言いたいこと
をはっきりと伝えます。また、数字や絵などで具体的にイメージできるように伝えます。
- 表情や目配せ、身振り手振りなどで感情や気持ちを伝える：言葉だけではなく、表情や目配せ、身振り手振りなどで感情や気持ちを伝えます。
また、子どもの表情や目配せ、身振り手振りなどにも注目して、子どもの感情や気持ちを読み取ろうとします。
- 子どもの興味や関心に合わせて話題を選ぶ：子どもが興味や関心を持っている話題について話しかけたり聞いたりします。また、子どもが興味や関心を持っていない話題については無理強いしないようにします。
- 子どものペースに合わせて話す：子どもが話すときはじっくりと聞いてあげたり質問したりします。また、子どもが話さないときは無理に話させようとしなかったり急かさなかったりします。
- 子どもの発言や行動に対して肯定的に反応する：子どもが話したり行動したりすることに対して、積極的にほめたり褒めたりします。また、子どもが間違ったり失敗したりすることに対しては、責めたり叱ったりせずに、優しく正しい方法を教えたり励ましたりします。
子どものコミュニケーション能力を育てる支援や教育を受けさせる
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもは、言語能力や非言語能力、社会性などのコミュニケーション能力が低いため、支援や教育を受けることで、コミュニケーション能力を育てることができます。支援や教育は、以下のような方法があります。
- 言語療法：言語聴覚士などの専門家によって行われる、言語能力を向上させるための療法です。言葉の理解や発話、会話などの言語的コミュニケーション能力を訓練します。
- 行動療法：心理士などの専門家によって行われる、行動や感情を改善させるための療法です。応用行動分析（ABA）やピボタル・レスポンス・トレーニング（PRT）などの手法があります。非言語的コミュニケーション能力や社会的コミュニケーション能力を訓練します。
- 特別支援教育：保育園や学校などで行われる、発達障害を持つ子どもの教育です。個別指導や集団指導などの方法があります。コミュニケーション能力だけでなく、知的能力や生活能力なども育てます。
子どものコミュニケーション能力を育てる支援や教育は、早期に開始することで効果が高まります。また、親や周囲の人と連携して行うことで効果が持続します。
子どもの社会参加や自立を促す機会を作る
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもは、他者との交流や協調が苦手で、孤立したり引きこもったりする傾向があります。そのため、親や周囲の人は、以下のようなことをして、子どもの社会参加や自立を促す機会を作る必要があります。
- 子どもの興味や関心に合わせた趣味や活動を見つける：子どもが興味や関心を持っている趣味や活動を見つけて、子どもに参加させます。また、同じ趣味や活動を持つ他の子どもと交流させます。これによって、子どもは楽しみや達成感を得るとともに、コミュニケーション能力や社会性を身につけることができます。
- 子どもの能力や適性に合わせた学習や就労の機会を提供する：子どもが学校に通う場合は、子どもの能力や適性に合わせたカリキュラムや支援を受けさせます。また、子どもが就労する場合は、子どもの能力や適性に合わせた職場や支援を探します。これによって、子どもは自信や自尊感情を高めるとともに、自立生活を送ることができます。
- 子どもの意思や選択を尊重する：子どもが自分の意思や選択を表明する場合は、親や周囲の人はそれを尊重します。また、子どもが自分の意思や選択を表明できない場合は、親や周囲の人はそれを推測しようとします。これによって、子どもは自己決定権や自己責任感を持つことができます。
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもの親として知っておきたいこと
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもの親としては、子どもの特性を理解し、子どもの発達段階や個性に合わせた支援や教育を受けさせることが大切です。また、子どもの社会参加や自立を促すことや、親自身のメンタルヘルスやサポートネットワークを大切にすることも重要です。
ここでは、自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもの親として知っておきたいことについて、以下のようなポイントを紹介します。
子どもへの理解と受け入れ
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもは、他者と異なる特性や行動を示すことがあります。そのため、親は以下のような感情や思いになることがあります。
- ショックや悲しみ：子どもが自閉症スペクトラム障害であることを知ったときに、ショックや悲しみを感じることがあります。また、子どもが他者と比べて遅れていることや困難に直面していることに対して、悲しみや心配を感じることがあります。
- 怒りや不満：子どものコミュニケーションの障害によって、親子間のコミュニケーションがうまくいかなかったり、子どもの発言や行動に困惑したりすることがあります。そのときに、怒りや不満を感じることがあります。
- 無力感や孤独感：子どものコミュニケーションの障害に対して、親自身がどう対応すればいいのかわからなかったり、周囲の人に理解や支援を得られなかったりすることがあります。そのときに、無力感や孤独感を感じることがあります。
これらの感情や思いは、親ならではの自然な反応です。しかし、これらの感情や思いにとらわれすぎると、親自身のメンタルヘルスを損なったり、子どもへの対応に影響したりする可能性があります。そのため、親は以下のようなことを心がける必要があります。
- 子どもの特性を理解する：子どものコミュニケーションの障害は、生まれつき持っているものであり、子どものせいではありません。また、子どもは自分なりにコミュニケーションしようと努力しています。そのため、親は子どもの特性を理解し、否定せずに受け入れます。
- 子どもの長所や個性を見つける：子どものコミュニケーションの障害は、短所だけではありません。子どもはコミュニケーションの障害以外にも、長所や個性を持っています。そのため、親は子どもの長所や個性を見つけて、認めてあげます。
- 子どもとの関係を大切にする：子どものコミュニケーションの障害は、親子間の関係を壊すものではありません。子どもは親に愛されていることや信頼されていることを必要としています。そのため、親は子どもとの関係を大切にし、愛情や信頼を示します。
親自身のメンタルヘルスやサポートネットワークを大切にする
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害を持つ子どもの親は、子育てに多くの時間や労力を費やすことがあります。そのため、親自身のメンタルヘルスやサポートネットワークを大切にすることが重要です。以下のようなことを心がけるとよいでしょう。
- 自分の感情や思いを吐き出す：親は子どものコミュニケーションの障害に対して、さまざまな感情や思いを抱くことがあります。それらの感情や思いを溜め込んだり抑え込んだりすると、ストレスがたまったり、うつ病などの心の病気になったりする可能性があります。そのため、親は自分の感情や思いを吐き出すことが大切です。信頼できる家族や友人、専門家などに話したり、日記やブログなどに書き出したりすることが有効です。
- 自分の時間や趣味を持つ：親は子どものコミュニケーションの障害に対応することで、自分の時間や趣味を犠牲にすることがあります。しかし、自分の時間や趣味を持つことは、親自身のリフレッシュやリラックスにつながります。そのため、親は自分の時間や趣味を持つことが大切です。好きな音楽を聴いたり、本を読んだり、運動したり、美容院に行ったりすることなどがおすすめです。
- サポートネットワークを作る：親は子どものコミュニケーションの障害に対応することで、孤立したり孤独感を感じたりすることがあります。しかし、親一人で子育てをすることは難しいです。そのため、親はサポートネットワークを作ることが大切です。サポートネットワークとは、親が子育てに関して相談したり助け合ったりできる人や団体のことです。家族や友人、近所の人、保育園や学校の先生、医師や専門家、自閉症スペクトラム障害の子どもの親同士のグループなどがサポートネットワークになります。
まとめ
この記事では、自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害とはどんなものか、親として知っておきたい３つのポイントについて解説しました。
- 自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害とはどんなものか：自閉症スペクトラム障害は他者とのコミュニケーションや対人関係に困難がある発達障害です。コミュニケーションの障害には言語的コミュニケーションの障害、非言語的コミュニケーションの障害、社会的コミュニケーションの障害があります。原因は脳の機能に何らかの異常があることが関係しています。診断は専門医によって行われます。
- 子どもへの対応方法：子どもへの対応方法は子どもの発達段階や個性に合わせて行う必要があります。また、親や周囲の人が子どもの特性を理解し、受け入れることも重要です。子どもへの対応方法には、子どもの個性やニーズに合わせたコミュニケーションを心がけること、子どものコミュニケーション能力を育てる支援や教育を受けさせること、子どもの社会参加や自立を促す機会を作ることがあります。
- 親として知っておきたいこと：親として知っておきたいことは、子どもへの理解と受け入れ、親自身のメンタルヘルスやサポートネットワークを大切にすることです。親は子どもの特性を理解し、否定せずに受け入れます。また、親は自分の感情や思いを吐き出し、自分の時間や趣味を持ち、サポートネットワークを作ります。
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの障害は、子どもにとっても親にとっても大きな課題ですが、適切な支援や治療を受けることで、症状を改善したり、社会生活を送ることができます。
親は子どもの特性を理解し、受け入れるとともに、自分自身のメンタルヘルスやサポートネットワークを大切にすることで、子どもと一緒に幸せな生活を送ることができます。
